記事No.: 6   日時: 2008/08/13(Wed.)

  小学生〜高校生くらいまではあまり縁がなかったけど,ここ5年くらい(社会人になったあたりから),友達に誘われたりして毎年1〜2回は花火を観に行っています.物凄い混雑したところに長時間場所を取るのは大変だけど,それだけの事をする価値があるほど花火は良いものです.

  そんな色取り取りで綺麗な花火ですが,先日,どんな材料を使い,どんな構造をした物を打ち上げるのか良く知らない事に気が付いたので,図書館に篭って簡単に調べてみました.資料があまり多く見付からなかったので,細かい部分が多少間違ってるかもしれないのですがご了承下さい.要するに学校の宿題などに引用したりすると大惨事です.


■ 花火玉

  打ち上げ花火は,火薬の詰まった丸い物体を大砲のような筒に入れて火を点けて打ち上げます.この時の丸い物体を花火玉と言います.


図1:花火玉(断面図)

  上の図はほんの一例で,花火の火の拡がり方などによって様々な構造をしています.らしいです.導火線に火が点いた状態で上空へ打ち上げ,火が割薬と言う火薬まで達すると花火玉は爆発し,綺麗な光が観客の元へ届きます.その綺麗な光が詰め込まれてるのが,星,心星と言う部分です.心星は花火の中心に近い部分,星は外側の部分の光になります.なるらしいです.

  先ほど書いた通りこれは一例なので,星の配置などの構造は,花火の形の種類と同じだけ多くの種類があるそうです.・・・が,そう言った技術的な情報は企業秘密と言うか門外不出になってる事も多いらしく,少なくとも自分が見た本の範囲では3〜4種類くらいしか見付かりませんでした.残念.

  この花火玉の大きさは,直径9cm〜30cm,60cmや90cmの物もあり,2000年時点では120cmの物が世界最大らしいです.大きい花火玉ほど当然打ち上げる為に必要な火薬も沢山必要で,その相関を見ると中々面白いです.


図2:花火玉の直径と打ち上げに必要な火薬の量

  直径15cmの花火玉は75gの火薬が必要なのに対し,90cmの場合は15kgもの火薬が必要になってしまうそうです.まぁ,重さも相当なものだろうし仕方ないんだろうけど,15kgは凄い.因みに大きな花火玉ほど爆発した時に大きく拡がり,大きく拡がるほど高く打ち上げなくてはならないので,そう言う違いも火薬の量に加味されていると言う事でしょうか.


図3:花火玉の直径と到達高度,開花時の半径

  開花時(=爆発した時)の大きさ,上がる高さは上記のグラフのようになります.90cmの物は600mも上がり,直径にすると500m以上も拡がります.実際に花火を見て数字を意識する事はないし目測も難しいけど,やっぱり数字を見ると凄いですね.


■ 花火の色

  先ほどの花火玉の内部の話で,"星"と言う部分が花火の光になると書きましたが,赤や緑などの光の色はどのように出しているかと言うと,炎色反応を利用しています.炎色反応とは,アルカリ金属などの化合物に火を点けると特定の色に発光する現象の事を言います.例えば黄色い花火の材料には,火を点けると黄色く光るナトリウムの化合物が使われています.以下,調べた限りの,花火に使われている色を付ける材料の表です.

表1:花火に使われる炎色反応の物質と色
花火の色 使われてる材料
炭酸ストロンチウム SrCO3   硝酸ストロンチウム Sr(NO3)2
シュウ酸ナトリウム Na2C2O4
硝酸バリウム Ba(NO3)2
硫酸銅 CuO
アルミニウム Al   マグネシウム Mg

  化学式の数字は面倒なのでそのまま書いてますが,本当は全て小さい文字です.水色や桃色などは,青と白,赤と白を混ぜて色を出すそうです.花火玉の"星"には,これらの色を付ける材料の他に,過塩素酸カリウムが含まれています.これは花火をちゃんと光らせるための物質です.もう少し化学っぽい言い方をすると,燃焼を早く進めるための酸素の供給源です.酸化剤です.


■ その他,参考文献

  その他,本を読んでて分かった事.

  日本製の花火は世界一精巧な技術で世界一美しい.けど値段も高く,中国製の花火は日本製の10分の1で買えるらしい.なので,最近の花火大会では主に中国製の花火を打ち上げ,見せ場とかで少数の日本製の花火を打ち上げるそうです.今まで花火って言ったら全部日本製なのかと思ってたよ・・・.

  日本製の花火玉は球体だけど,海外の花火玉は円筒形らしい.海外の花火は見た事ないけど,打ち上げた時の拡がり方も違うのだろうか.

  と言う事で,以上が自分が調べた花火の知識になります.本を読みあさって勉強したのが学生の頃に論文を書いて以来の事だったけど,うろ覚えの知識がある程度まとまったし,有意義な勉強でした.ネットでは花火大会のスポットとかレジャー的な情報が多そうで調べるのが大変そうなので,ほとんど利用しませんでした.以下,参考にした書籍です.

・桜井弘  元素111の新知識  講談社
・井上友治 渡辺義一 後藤章  原色化学実験プロセス図説  黎明書房
・小野里公成  花火百華  丸善ライブラリー
・久保田浪之介  火薬のはなし  日刊工業新聞社



記: 2008/08/13(Wed.)


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